S20 (シャープペンシル)vs 野原工芸(木のシャープペンシル):比較レビュー

文具評価

目標

本レビューでは、どちらのペンが万人にオススメできるかを、書きやすさや使いやすさから判別していきたいと思います。

簡易評価

価格差S20
機能差S20
書きやすさS20
書き味野原工芸
汎用性S20

総合評価:S20

書きやすさに優れ、書き味もそこそこ、木軸という風合いも楽しむことができて価格的にも高すぎないS20の方がオススメ。

野原工芸のペンは何かしらの目的(木の風合いをより楽しみたい、コツコツ感を得たい)などある場合の使用がベスト。

概要

今回は、パイロットより発売されている「S20」と、野原工芸より販売されている「木のシャープペンシル」とを比較していきたいと思います。

なお、目標にもある通り、今比較ではどちらがよりオススメできるかを、使い勝手の良し悪しを主軸にして、いつもの項目で比較していきます。

1. 価格差

S20 >> 野原工芸

S202,000円(税抜)
野原工芸8,000円(税抜)〜

※野原工芸に関しては、本店ならばひび割れ等で更に安いものもある。

本来であればS20も十分高価ではありますが、その上をいくのが野原工芸です。

価格云々の前に、そもそも野原工芸のペンの購入難易度は相当高いですので、S20の方がはるかに手をつけやすいでしょう。

一応補足として、過去には野原工芸のペンも2,000円ほどで販売していた時期があったと聞いたことがあります。

これほどの値上がりを野原工芸の驕りだと捉える人がいるようですが、個人的にはそういう問題ではないと思っています。

その時期というのは十数年前の話になりますが、その頃とは木の価値や円の価値が変わり、専用クリップや口金等の新規造形などによりペンのコストも変わっています。ここに挙げた以外にも要因は考えられるわけで、「人気だし値段上げたろ!」みたいな安直なものだとは到底思えません。

比較とはあまり関係のない話になりましたが、以上のことから、この価格は妥当であり、安いまであると私は考えています。

2. 機能差

S20 > 野原工芸

両者に共通する筆記以外の機能としては、クリップ機能と消しゴムがあります。

純粋な機能としての差はありませんが、S20は取り外しが一応可能です。

その他で比較すると、S20には硬度表示窓とクリーナーピンの付属が、野原工芸には口金の変更機能があります。

S20の機能はどちらも実用性がありますが、硬度表示は製図場面や複数所持していない限りそれほど重要な要素でなく、クリーナーピンは芯詰まりに対処できますが、付属品でなくても対処可能で代替が利きます。

他方、野原工芸の口金の変更によるスライド式・固定式の変換はS20には通常できない芸当で、使い方どころを見極めれば落下による損傷を防ぐこともできます。ですが、特別必要な機能かと言われるとそうでもなく、あくまで趣味の範疇です。

S20は芯詰まりなどハプニングへの対応力が高く、硬度表示窓やクリップの取り外しは応用力もあるため、機能性に優れると言えそうです。

ただ、野原工芸の口金変更も普段活用でき、替えの効かない機能ですので、意外にも機能性に優れます。

今回は、応用力の高さという点から、S20優勢とさせていただきます。

3. 書きやすさ

S20 >>> 野原工芸

流石にS20です。重さもその配分から分かる通り、明らかにS20の方が書きやすさに特化しています。

S20は全てシャープペンと比較しても最上位クラスと考えていますので、重たくて中重心の野原工芸では分が悪いでしょう。

4. 書き味

野原工芸 >> S20

重量素材構成
S2018g回転中心付近に重い金属が集中
野原工芸30〜32g全体的に重い金属が分布

こちらの項目では、野原工芸の方が圧倒的に優れています。S20が悪いわけではありません。野原工芸がその更に先にいるというだけです。

ここを担う大きな要素として重量が挙げられます。この2本はどちらとも木軸なため質感は似たり寄ったりで、どちらのペン先も固定できるゆえ、重量による影響度合いがこの比較ではより重要になってきます。

そんな中で、S20の18gに対して野原工芸は30g以上ありますので、この差は歴然でしょう。コツコツとした書き心地に加え、重要感を得ることができます。

5. 汎用性

S20 >> 野原工芸

ここでいう汎用性とは、言い方は悪いですが、どんな場所・場面でも雑に使えるかみたいな意味合いになります。

野原工芸の場合、テストなど時間制限のある場面では重量によって不利に働きますし、普段使いであっても高価ですので雑には扱えず、適当に筆箱に入れるようなこともできない、というかしたくありません。

一方S20は、こちらも決して雑に扱っていい代物ではありませんが、テストであっても、メモ用の一本としての利用であってもどこでも使いやすく、野原工芸のペンよりはジャラジャラとしたペンケースに入れやすくはあります。私はやりたくありませんが。

また、どちらも人気なペンですが、価格と入手難易度が大きく異なるという点も考慮しなければなりません。

高価で入手条件の限られる野原工芸のペンは盗難の可能性も否定できず、そういう意味でもどこでも使いやすいとは言えない、ということです。

よって、S20の方が汎用力があるものと考えます。

ただし、野原工芸に汎用性がないわけではなく、本来この手のペンはコレクションや装飾としての使用がメインになりがちです。

そんな中で、野原工芸はペンとしての用途でもなんら問題なく、それどころか手に馴染む使用感や書き心地のよい重量感と楽しく使える要素も多くありますので、こういった種類のペンであることを考慮すれば、間違いなく汎用性のあるペンだと思います。

6. デザイン

例によって、デザインは感性によるものですからあえて評価しません。

見た目という話では、個人的にはどちらも違った良さがあると思っています。

同じ木軸ですが、木の利用方法が大きく異なります。

S20は作成にあたってカバ材を色々こねくり回して強度を上げたりデザインの統一感を生み出しているわけですが、野原工芸は基本的に、木をそのまま削り出すことで作成されていますので、木としての魅力を十二分に感じることができます。

こういったところが、S20では満足できない方が現れる要因で、野原工芸の木軸ペンが魅了される理由の一つでしょう。

総評

S20 >> 野原工芸

今回の条件で言うならば、書きやすさに優れ、書き味もそこそこ、木軸という風合いも楽しむことができる上に、高価すぎないS20の方が万人にオススメできます。

野原工芸も普通に使っていけますが、どちらかというと趣味性の中に実用性も兼ね備えているようなペンですので、実用性重視のペンに木軸の特性を加えた結果、趣味的に愛されることにもなったS20とは成り立ちが真逆と取ることもできるほど相反するもので、この比較においては敵いません。

その一方で、書き味や木軸としての趣味的観点から愛されるのは野原工芸の方が上でしょうし、結局は比較方法によるとしか言えないでしょう。

総括

所々で比較とは関係のない事柄も述べていますが、それはこの評価を通じて野原工芸に対する正しい認識を持っていただきたいという思いからわざと記述しています。正直、こういったブログを最後までわざわざ読んでくださる方には必要ないメッセージだと思いますが、人気すぎることに加え、入手が難しいことから、その特性を理解できず「書きやすいペンだから人気」なのだと捉えている人も案外多いのではないでしょうか。

それ自体は悪いことではなく、自分で所有していないものを評価することは難しいですし、人気なペン=書きやすいと思ってしまうのは自然な考え方です。

ですので、同じ木軸ペンとして人気があるS20と比較することで、特色が異なることを知っていただき、野原工芸は書きやすさや普段使いという点であえて評価するペンではないと知って欲しいと願い、この比較を行いました。

また、野原工芸のペンがそういった場面で不向きだと知りつつも好きで使いたいという方も居られると思います。私もその一人です。

その場合でも、特に中高生は盗難など心配事が多数あることは肝に銘じておきましょう。某文房具系YouTuberさんは高校時代も使用していたそうですが、その頃と今とでは野原工芸のペンの価値は異なり、その上で価値があること自体が周知されるようになってきました。

ですので、現代で同じように普段から使うことにはリスクが伴うのだと、承知した上で利用、あるいは購入を検討して頂きたいと、いちユーザーとしては思います。

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