簡易評価
書きやすさ総評:3/5点

※書きやすさの観点から評価。総評への影響度は項目により異なる。
書き味総評:3/5点

※書き味の観点から評価。総評への影響度は項目により異なる。
概要
| 種類 | ボールペン |
| 機構 | ノック式 |
| 素材 | グリップ:木(樽) クリップ:銅材? 先端:銅合金? |
| 初期リフィル仕様 | 油性(ジェットストリームインク) |
| 初期リフィルサイズ | 0.5mm |
| 対応リフィル | SXR-5 |
| ラインナップ | ナチュラル、ダークブラウン |
| 価格 | 3,800円(税抜)/ 4,180円(税込) |
| 発売元 | 三菱鉛筆 |
※?は不確定
ピュアモルト ジェットストリームインサイド シングルは、三菱鉛筆より発売されているノック式木軸シャーペンです。
例によってピュアモルトの樽材を再利用した軸材となっており、年季の入った木らしい触り心地を体感できます。
価格は4,180円(税込)で、やや高めな部類です。
使用感
| 全長 | 145mm | グリップ径 | 11mm |
| クリップ距離 | 100mm | 先端長 | 3+1mm |
| 重量 | 22g | 慣性モーメント | △ |
| 重心 | 73mm | 特記事項 | – |
長さ・重量・重心のバランス
書きやすさ:3/5点 書き味:5/5点

明確な書きにくいポイントとしては、高い重心、慣性モーメントの大きさ、それなりの重さがありますが、高級筆記具基準では書きやすい部類でしょう。
特別優れる要素もありませんが、特別悪いという点もこの項目では見当たりませんでした。
書き味も重さ的には十分な水準です。
握りやすさ・質感
書きやすさ:4/5点 書き味:2/5点
木軸ですので、汗に強めで基本的には強いグリップ力となっています。
一方で、乾燥した手には極端に弱く、経年変化を重ねていない状態では非常に滑りやすいです。
手のコンディションにより使用の可否を決定することが望ましいでしょう。
質感についてですが、心なしか4+1の方よりも重厚感的なものがあまり感じられません。内側に金属は使われていますので構成は同様に思えますが、軸の密度の問題か、妙に軽く感じます。クルトガウッドのグリップにやや似た感覚で、スカスカな木を握っている感覚に近いかも知れません。
クリップまでの長さ・形状
書きやすさ:5/5点
よほど斜めに持たない限りは、基本的に手に当たりません。
形状自体は尖っていますが、上記の理由により気になることもないでしょう。
芯・リフィルの筆記感
書きやすさ:5/5点
流石のジェットストリームインクで、油性らしい書き心地でありながら、滑らかな筆記感も兼ね備えています。
初期は0.5mmリフィルが搭載されていますが、通常のジェットストリーム スタンダードと同様のリフィルに対応しているため、安価かつ入手が容易です。詳しい話は「利便性」の項目で話しますが、幅広い範囲のリフィル径と赤色・青色インクもありますので、初期の太さ、色が気に入らなければ交換して使用しましょう。
ペン先の視界・ガタつき
書きやすさ:4/5点 書き味:4/5点
特別ガタつき軽減の工夫等はなされていないため、ボールペンらしいグラつきはあります。
一応テープで軽減はできると思いますが、書きやすさに大きな影響があるとも思えませんし、このペンに書き味をそこまでして求める必要もないでしょう。
キャップ・内部のグラつき
書き味:5/5点
このペンの大きな評価ポイントの一つがこの項目です。
ノックしたらその高さで固定される割と珍しいタイプで、内部とキャップの両方でグラつきは全くありませんでした。これだけでも相当ストレス軽減になりますので、個人的にはかなり嬉しい設計だと感じています。
素材・剛性感
書き味:2/5点

先端は同合金系の金属(真鍮の仲間)が使われていると思われますが、それ以外のほとんどが木、軸内部に金属がガッツリ使われているわけでもなく、リフィルも柔らかいためコツコツ感らしいものは感じられないでしょう。
その先端も密度的にはそれほど金属量が多いわけでもなさそうで、決して軽くはないけど重厚感もない微妙な塩梅です。
書き味的には悪い評価になりましたが、しっとりとした感覚が得られ、静かに筆記できるので総合的に見れば実は良いポイントと捉えることもできます。
それ以外の話として、先端のネジ部分にOリングが付いています。木軸ペンは強く締めると開かなくなったり破損したりの危険があるため緩めて使用することになりますが、これのおかげで外れにくくなっています。そういう意味では安心して使用可能でしょう。
ノック感・音
ややしっかり押す必要がありますが、ノック音は静かで、こちらもしっとりとしています。
周りを気にせず使えるので割と使いやすいと思います。
耐久性
木材が使われていますので、強く落とせば割れる可能性はあります。それなりに注意して扱うようにしましょう。
利便性
ペン自体に特別優れた機能はありませんが、筆記音やノック音の静かさ、あと大人しいデザインというのもあって静かな場所でも使用しやすいかと思います。
また、対応するリフィル規格がジェットストリーム スタンダードと同様のものであるため、それと規格の似るものならば互換性があります(公式には推奨されませんが)。
具体的には同社製のユニボールゼント(UBR-Zシリーズ)、ユニボールワン(UMR-xSシリーズ)のリフィル、ぺんてるのエナージェル(XLRシリーズ)のリフィルとの互換性が確認できました。手元にあるもので確認しただけなので、他にも対応してるものがあるかも知れません。
公式には0.38〜1.0mm(黒・赤・青)の油性リフィル対応となりますが、実際には更に幅広い選択が可能となります。
デザイン
結構言いたいことがありますが、まずは良いと思ったところからお話しします。
外観から見て取れるように、先端から後方にかけてカーブを描くような形となっており、色味と相まってかつて樽だったという存在感のようなものが感じられます。
木以外の金属部分も、木に合わせた色味となっており、変に飛び立った組み合わせをしておらず上質さを醸し出しています。
では私は何が不満なのかというと、一つ目はS20にも見られる現象ですが、木目が上下でズレている点です。

ダークブラウンはまだ良いですが、ナチュラルだとそこそこ目立ちます。探せば一致する個体もあると思いますが、そんなに安い物でもないですし、ここは一致させて欲しかったなと思います。
次に、部品間の接着における処理の雑さです。

近づけて見るとわかるかと思いますが、所々で接着剤の跡がガッツリ残っています。特に目立つのがここというだけで、中央の分断位置にもありました。高級筆記具なのに、これは流石に雑すぎると思わざるを得ません。
また、店頭で確認したところ、先端と木軸のズレがチラ見でわかるほどサイズの一致していない個体もありました。

私は相対的に目立たない個体を選びましたが、それでも様々な木軸ペンと比較すると目立つ部類かなと思う程度にはズレています。
これらに加えて、前述の剛性感のなさや、パッケージが紙素材であることかは、コストカット感というかチープさというか、正直、安っぽいなという印象を抱いてしまいました。
実際にコストの問題も大きいのは承知していますが、せめて接着跡くらいは消して欲しかったなと思います。
書きやすさ総評
評価:3/5点
高級ボールペンとしては中々に書きやすい部類です。
ただ言葉を選ばずに言えば、特に書きやすい理由はなく相対的に軸が軽めなだけ、しかも軽めであって軽いわけではないというなんとも中途半端な構成です。どうせなら木の体積を大きくするとか細部の作りも拘るとかで、所有感方面を伸ばした方が良かったのではないかと思ってしまいます。
書き味総評
評価:2/5点
ここでいう書き味とは、いわゆるコツコツ感を表したものです。
その評価点においては、主に素材構成の面で優れているとは言えず、これを求めて購入する代物ではないでしょう。
ただ、全く別の見方をして静かかつ優雅に筆記できることを「書き味に優れる」と定義するならば満点級のペンだと思います。そのくらいノック音と筆記音の静かさに私は惹かれました。
総括
ピュアモルト ジェットストリームインサイド シングルは、高級油性ボールペンという括りでは確かに書きやすいペンでしょう。しかし、あえていうなら高級度合いも高速筆記性能も平凡、どっちつかずで安っぽい面もそこそこ目立ちます。
私は高級感がありつつも書きやすいペンになることを望んでいましたので残念には思いましたが、静寂感と対応リフィルの多さは他のペンとの差別化点として強力なポイントです。
高級ペンとなれば、大抵G2規格だったり独自規格だったりで、リフィルへの対応範囲は狭いです(G2も悪くありませんが、水性やゲルインクに弱いですし)。そんな中このペンはユニボール系統やエナージェルリフィルを、推奨はされないながらも交換して使用可能ですので、好みの色・筆記感のリフィルを使える強みがあります。
総じて、三菱鉛筆の良いところと悪いところの両方がはっきり表れたと言えるような商品でしょう。

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