S20(エストゥエンティ)(ボールペン):評価レビュー

文具評価

概要

こちらの「S20」は、パイロットより発売されているシャープペン「S20」のボールペン版です。

あちらと同様に、軸は「樹脂含浸カバ材(コムプライト)」と呼ばれる、樺の木に樹脂を浸透させた素材で作られています。加工の際に木をスライスするため本物ではありませんが、木目を再現していて、その上でペン1つ1つの模様も違うので「自分だけの木軸ペン」という感覚を味わうことができます。

ボールペンの中では高級一歩手前くらいの価格設定で、2,000円(税抜)となっております。

使用感

長さ・重量・重心のバランス

見た目こそシャープペンのS20と瓜二つですが、結構数字が異なっています。

その中でも、重さや重心位置など重量に関わるものがかなり違っていて、思ったよりも使いづらさを感じやすいかも知れません。

具体的には、重さがシャープペン版より1.6g重く、重心位置が70mmとそこそこ高いため、高速筆記などの場面ではそこそこ疲れを感じてしまいます。

加えて、シャープペンの方とは違い、ボールペンの設計上仕方ないですが、ペンの上端に重量が偏っているため取り回しもイマイチで、少し残念な印象です。

ただし、これはあくまでシャープペンと比較した場合の話で、安価なボールペンだとまた話は変わってきますが高級系のボールペンと比較するとこれでもかなり使いやすい方ではあります。まぁ高いボールペンって重かったり重心高かったりするペン多いですからね。

握りやすさ・触り心地

グリップは先端に向かうにつれて曲線を描きながら細くなっていく形状で、太さも程よいため自然に握ることができます。

しかし、初期状態では表面が滑らかで滑りやすいです。木軸特有の経年変化から使用を重ねるごとにグリップ力が向上しますが、最初のうちは肌が乾燥しているとかなり使いづらく感じるように思います。木材ですので、汗(水分)を吸収しグリップ力が増強するので、最初のうちはそういった状況で使って経年変化を促進していくと良いでしょう。

クリップまでの長さ・形状

クリップの位置は高めで、通常の持ち方では手に当たることはまずないでしょう。太すぎず、角ばってもいないため、手に当たったとしても違和感なく使えます。

挟みやすさに関しては、特別挟みやすいわけではないですが、開ける時に手が痛くなる等の問題はありませんでした。

ペン先の視界・ガタつき

軸は先端にいくほど細くなっていく形状で、リフィルも先端に向かって細くなる一般的な形状をしているため、特に視界の問題はありません。

ガタつきは少しあります。気になる場合はテープで補強すると良いでしょう。

キャップ・内部のグラつき

かなり揺れを感じます。気になる人にとってはかなり不快な要素となるでしょう。

その上、ここは分解不可能なため、基本的にはテープによる補強が出来ず、改良できないため苦手な方は使わない方が良いかも知れません。

私は無理矢理テープを詰め込んで抑えていますが、ちょっとはみ出してしまってますし、取り外しもできないので、非推奨です。もしテープの量を多く詰め込んでしまったらノック不可になる可能性もありますので無理な改良は辞めておいた方が良いでしょう。

ノック感・音

特に強いクセはありませんが、面積が狭めですので、連続で押せば痛むこともあるかも知れません。不快音などはありませんでした。

耐久性

ガイドパイプがあるわけではないので先端の心配は要りませんが、上部の機構が壊れてしまうと修復不可なようです。

落として壊したという例をネット上でそこそこ確認できるので、できるだけ落とさないよう気をつけておきましょう。

利便性

対応リフィルが純正では、パイロットのBRFNシリーズのみの対応なので、利便性が高いわけではありません。

ただ、このインクは油性インクの中でも滑らかで、ボールペン特有の書き始めの掠れもほぼありませんので、互換性はないですが問題なく使用できます。

初期リフィルの書き心地

アクロインキと呼ばれる低粘土の油性インクなため、油性の中でもかなり滑らかなインクです。

逆に言うと滑らかすぎて引っかかりがあまり無く、若干制御に困ることもあるかも知れません。

とはいえ、それは乱雑に書く場合に顕著に現れるようなもので、基本はスムーズに書けるため使いやすいインクとなっています。

素材・剛性感

軸の外側は木ですが、内側は真鍮が使われていて、ネジ部分なども金属で構成されているため、しっかりと作られている方です。

初期リフィルは外装が樹脂製ですので、それほど剛性感は感じられませんが、別売りで金属製リフィルも販売されているため、そちらに変えると剛性感を感じやすくなります。

デザイン

特別高級感があるわけではないですが、チープさもなく上品で落ち着いた印象です。

ただし、グリップ部と軸部の木目がズレている個体が多いので、ズレが気になる場合は、実物を見て選ぶことをオススメします。

書きやすさ総評

評価:B

高めの重心位置に加えてそれなりの重さと偏りのある重量バランス、グラつきも少々あって、シャープペン版の「S20」のメリットをほとんど潰したような配分となってしまっています。その上で、初期は軸が滑りやすく、あちらとは違い壊れたら修復の可能性も絶望的で、正直使うメリットがあまり見当たらないというのが率直な感想となってしまいます。

一応、金属リフィルに変えると重心は多少下がるのですが、その分重くなるので一長一短です。個人的には重心の低さで重さはカバーできると思っていますのでこちらに変えて使用しています。

また、上記の評価はあくまで使いやすいシャープペンや安価なボールペンと比較した場合の評価であって、高級志向のボールペンの中ではかなり使いやすい水準ではあります。

安価なボールペンに関しては、価格の分デメリットも意外とありますので、「ボールペン」だけで考えると実はそれなりに書きやすい部類に入るでしょう。

書き味総評

評価:C

素の状態で使う場合、あまりコツコツ感のようなものは感じられません。

ただ、リフィルを金属リフィルに変えることでコツコツ感が上昇し、更にテープで補強することでガタつきを抑えることができるので少し変更を加えるだけで随分マシになります。

どうしてもノック部分の揺れだけはリスクなしで抑えることはできませんが、無理矢理テープで補強した結果、かなり書き味が良くなりました。前述の通り非推奨ですが、とにかくこのペンに拘りたい場合は使えなくなる覚悟を持った上で改良を加えてみても良いかも知れません。

総括

S20は、シャープペン版に比べると残念な評価となってしまいましたが、ボールペン(特に高価格寄り)のペンと比較すると中々使いやすいペンです。

とはいえ、まだまだ改良の余地があるペンですので、なんらかの修正がされて新発売されないかなと勝手に期待しておきます。

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